繋がっていく絆

ボストンテリアのうり(6歳・♂)、フレンチブルドッグの愛幸(11歳・♀)、トイプードルのグーイ(3歳・♂)と暮らす愛犬家の井上さん。
4歳のころからずっと愛犬と生活をしており、愛犬のいない人生は考えられないと穏やかに、しかし確信を持った口調で井上さんは語る。

これまでの人生、保護犬もブリーダーからの子も、何匹もの犬と暮らしてきた。別れも、出会いも、いつも犬が側にいた。
「亡くなった子がいると、気持ちは本当に辛い。でも、その子がくれた時間や愛情は、また次の子につながっていく。僕にとっては”命の循環”みたいな感覚なんです」
と語る井上さん。奥さんと愛犬3匹との生活は毎日が賑やかで温かい。

“特別だった”ブリュッセルグリフォンの「むにこ」

ブリュッセルグリフォンのむにこ

井上さんが話しながら、ふと少し表情を曇らせた瞬間があった。
「以前はブリュッセルグリフォンのむにこという女の子がいたんです。あの子は……本当に特別でした。」まるで兄妹のようだった、と井上さんは言う。
「僕の事をいつも追っかけてきてはベタベタしてくる子でした。僕が可愛がりすぎたというのもあるんですけどね(笑)。でもあの子のおかげで、辛い事があっても本当に救われたことが何度もありました。」
彼女が体調を崩し、亡くなったその日。
井上さんは、生まれて初めて声を上げて泣いた。

「大人になってあんなふうに泣いたのは、あの時だけです。僕の人生の中でも、大切な存在でした。」
元々、彼女は愛犬達の中でもリーダー的存在。残された2匹の愛犬への影響も大きかったようで、慣れるまではどこか落ち着かない様子だったという。そうした生活が続いたある日、印象的な出来事が起こった。

愛幸がうりの顔を舐め始めたんです。その姿には見覚えがあって…。むにこがそうだったんです。うりの顔をいっつも舐めてたんですけど、その姿がとても微笑ましくて…。ずっと記憶に残っていたので、仕草や行動を真似るような素振りを見せるんだなと驚きました。」
「愛情って、愛犬達の中にも伝染するんです。」
その言葉は、どこか誇らしさと切なさが混ざっていた。

3匹の“性格の違い”が、家族の物語になる

フレンチブルドッグの愛幸(あーこ)

現在一緒に暮らす3匹は、全員まったく違うタイプだという。
▼うり(ボストンテリア・6歳 ♂)
「ザ・テリア気質。マイペースで我が道を行くタイプ。僕とは“男同士”で一番仲がいいですね」
▼愛幸/あーこ(フレンチブルドッグ・11歳 ♀)
「ちょっと頑固。でも、奥さんのことが大好きで、ずっと後をついて歩いてます」
▼グーイ(トイプードル・3歳 ♂)
「完全に末っ子。奥さんにベッタリで、ちょっとしたことで嫉妬する可愛い奴です」
同じ家で暮らしても、性格も立場もまったく違う。
それでも3匹は「家族」としてまとまり、同じイスを取り合ったり、井上さんや奥さんの膝をめぐって争ったり、毎日がドラマの連続だ。
「賑やかですよ。なにかしら毎日起きます。でも、それがいいんです。家が静かだと逆に心配になりますね(笑)」

 

 

“散歩”は3匹との大切な時間

井上さんとボストンテリアのうり

多頭飼いになると大変なのは散歩だ。
「うちは全員散歩が大好きなので、毎日行きます。でも3匹とも『自分が一番がいい!』っていう性格なので(笑)」
井上さんが一人の時は「一日3回」。奥さんがいる時は「3匹そろってみんなで散歩」。忙しさも手間も、まるごと愛おしい。
「散歩は、犬にとっての喜びでもあるし、僕自身の気分転換にもなってます」

介護士として感じる“ペットと高齢者の未来”

井上さんは介護士として働いている。働く地域柄、高齢者がとても多い。
「私の住んでいる地域は、高齢の方が本当に多いんです。でも僕、ずっと思ってることがあって……」
少し真剣な声になる。「高齢者が、ペットと生涯一緒に暮らせる仕組みが必要です」
現実として、ペット可の特養や高齢者施設はほとんど存在しない。

「でも、犬や猫って、高齢者にとっては“生きる張り合い”になるんです。散歩に行けば運動になるし、会話が増えたり、認知症予防にもなる」

そして何より、
「ペットも、高齢者も、どっちも悲しい思いをしない社会がいい」
井上さんはそう語る。将来的には、高齢者がペットと一緒に最期まで暮らせる施設、一緒に火葬や埋葬までできる“真の共生”が叶う仕組みを作りたいとも考えている。
「犬たちに教わったことが多いから。今度は人とペットの世界をよくしていきたいんです」

最後に。井上さんにとって愛犬とは?

トイプードルのグーイ

静かに、しかし迷いのない声で井上さんは言った。
「“家族”ですね。僕にとっては子どもと同じ。喜びも悲しみも、一緒に共有できる存在。」

そして続いた言葉が、とても印象的だった。

「犬は本当に、人を救ってくれます。だから僕は、この子たちの人生にちゃんと責任を持ちたい。そして恩返しとして、ペットと高齢者が幸せに過ごせる社会づくりにも関わっていきたいんです」3匹の騒がしい足音。奥さんの笑い声。亡きむにこちゃんが残した優しさ。

井上さんの家には、たくさんの命の温度が息づいている。

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